記事一覧

寒中お見舞い

新年のご挨拶にはすっかり出遅れてしまいました。寒中お見舞い申し上げます。本年も日本ジュール・ヴェルヌ研究会をよろしくお願いいたします。

実際、色々と出遅れておりまして、ようやく今頃今年初めて本屋に行きました(正確にはフランス図書の閉店セールに行きましたが、これはちゃんとリュックを背負って出直さないといけないので数に入れない)。ちくま文庫の新刊を買い込んでしまいましたが、『レ・ミゼラブル』第三巻の「訳者ノート」がいきなり分量を増しているのに一驚、早速読んでみましたら、実に素晴らしい解説でした。ぜひ多くの方にお読みいただきたいと思います。しかし、うちの近所のごとき文化不毛地の新刊書店でも『レ・ミゼラブル』は面陳で最後の一冊でありました。

さらに新年早々個人的にびっくりしたどうでもいいトリヴィアをひとつ。コレットの最初の夫のウィリーって、ゴーティエ=ヴィラールの息子だったんですね! っといっても誰も驚いてくれないと思いますが、〈驚異の旅〉挿絵版の印刷所経営者(出版もしていた)です。かつてこの出版社があった住所の前のセーヌ沿いに、ヴェルヌ専門のブッキニストがあります。

脱稿  ある会員の活動26

前回はオバマ大統領の再選の中、会員活動報告をしていたのであったが、1ヵ月半で世の中また大きく変わってしまったらしい。

勘三郎が亡くなるとは思ってもみなかった。北朝鮮のミサイルが成功するとも思っていなかった。松井秀喜が引退するなどとは思ってもみなかった。

自公があれほど議席を獲得するとは思ってもみなかったが、これは同じことの繰り返しになりそうな気がしないでもない。

まあ、そんなこと言ったらマナカナのカナが結婚するとも、『読むことのアレゴリー』が完訳されるとも思っていなかったのだから、言いだせばきりがない。

ところで、去る23日に脱稿し、編集長に送付した。

今回は苦しかった。これほど難渋したのも珍しい。よく考えてみると、どうもテーマが大き過ぎたのではないかと思う。まず、まるで言葉が出てこない。これまではなんだかんだと適当なところから切り口が出てきたのだが、どうもとっつきがない。

ようやく少しずつ書き溜めていったものが、今度はまるでつながりを欠き、散漫もいいところになってしまった。ま、まとまらない・・・!

もう少し絞り込めばよかった、ほんとうに書きたいことほどうまくいかないのをヴェルヌの法則とでも名付けようか、などとぶつくさ言いながら、最後は何とか言葉をつないでいくのが精一杯であった。

惨憺たるものだ。(これは山田風太郎『妖説太閤記』)

で、やっと送った(書き上げた、という表現は、今回実感がない)はいいが、そういうタイミングで好著が出る。ベアント・ブルンナー『月』(白水社)はフィクションと現実の双方で月にまつわるエピソードを紹介していて、ヴェルヌ『月世界旅行』も出てくる。やや不正確なところも見受けられるが、NASAやSFなど、私の原稿に関連のあることがコンパクトに出てきている。

ちくま学芸文庫からは福井直樹『自然科学としての言語学』が出た。生成文法のいわゆる離散無限性という概念が、私の原稿で言いたいことに深く関わっていることに最近気付いたが、ま、もう遅い。組み込むのはあきらめた。

2012年ももう終わる。年が明けたらもう震災から2年近くなる。しかし、来年は『気球に乗って五週間』刊行150周年なのである。今後、ほぼ毎年のように刊行150周年が40年ほど続くことになる。

ちなみに、『グラント船長の子どもたち』刊行150周年(2018年)はちょうど明治維新から150年であり、私事ながら私は50歳である。

さて、年の最後に何を読もうか。と言いつつ、ちくま文庫新訳の『レ・ミゼラブル』第二巻、ワーテルローを読んだところ。

怒れる海

オーデンの『怒れる海』を読んだきっかけはなんだったのか――記憶では、ブルーメンベルクの『難破船』と同じころに読んだ気がするのですが、八木敏雄『「白鯨」解体』で、ピークォッド号が遭遇する船のタイプを分類する個所が紹介されていたからだったかもしれません。こういう小ぶりの名著に対する憧れがあるのですが、個人的にその双璧が金塚貞文の『オナニスムの秩序』と『怒れる海』なのです。この本は、『白鯨』論として読めるのですが、英米の詩の引用の的確さに初読時はうなったものでした。今回必要があって再読してみて、『海底二万里』がなぜか著者名抜きで引用されていたことは覚えていたのですが、最初の方で一、二度、と記憶していたのに、数こそ多くはないものの、実は全編にわたって引用されているのに驚きました。それにつけてもヴェルヌの名が一度も言及されていないのは不思議で、訳者の沢崎順之助も訳注で補ってもよさそうなのにそれもなく、しかも「ネモ大佐」となっていてがっくりします。まさか知らなかったなんてことはないと思うのですが……。もう一つ気になったのは、英米文学以外に引用が多いのはフランス文学なのですが、ボードレールとランボーばかり、マラルメ少々、はいいとして、なぜユゴーの引用が一箇所もないのか、ヒーローを論じながらなぜモンテ=クリスト伯に言及がないのか、後者はともかく、前者はいくらなんでも偏頗ではあるまいか、と(これは遅まきのユゴー読者の感想とはいえ)思えてなりませんでした。「ロマン主義の海のイメージ」と題しながらユゴーに一言もないのは、オーデンだからこそ許される、ともいえるのですが、なにか理由があるのでしょうか……

青い花

今日は新島さん渾身の訳業(の、はず)レーモン・クノーコレクション『青い花』の発売日であった。

が、なぜかヴェルヌ書店(アマゾンね)では品切れ。間に合っていないのか、部数をけちっているのか?

明日本屋さんに行ってみるか・・・

気になる番組

きょうの朝日新聞のテレビ番組欄を見ていた時でした。

NHK-BSプレミアム「ワイルド・ライフ選」(夜8:00~9:00)
「ノルウェー北極圏の海圧巻!世界最速の渦潮…」

 この番組をさっそくブルーレイ機器に予約した後で書き込みをしています。きっと、メールストロームだろうな、ユーチューブとは違った美しい映像で見せてくれるかもなと、期待しています。

 3,4年前だったか、インターネットでノルウェー観光施設が出しているホームページで「メールストローム」について質問したことがありました。「調べてみます」と返事をもらってから、ユーチューブに映像が流れた次第です。

 前にも「ワイルドライフ」で放送していたらしいのですが、うっかり見逃してしまったので「ワイルドライフ選」で再度取り上げてくれたのはうれしいものがあります。

 実際のメールストロームは大したことがない、と分かっていても長い間、スケールの大きな大渦巻をイメージしていたので、完全に拭い去れないものがあります。もしかしたら、干潮か満潮の際に小さな渦潮が集まってきて巨大化するのでは…と子供ぽい発送をしています。

ポオは周辺に架空の島々を出していますが、実際モスケン島だけ実在していますので、気になるところです。ユーチューブで流れている映像はどうも内陸の橋の下らしいので、心のどこかで夢を捨てきれないのかもしれませんね。

ページ移動