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気になる映画

 ジュール・ヴェルヌの作品に影響を与えている時代背景というと、南北戦争が思い出されます。「海底二万里」「神秘の島」でしょうか。未訳作品では「南と北」?というのがあるらしいですね。

この時代のアメリカ大統領といえば、エイブラハム・リンカーン。その彼の実像に近付けた映画か公開されるようです。

「リンカーン」4月19日
http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/

他には「月世界旅行」の第1部…南北戦争が終わった後の物語だそうだから、関係無いかな。この映画に期待しているのは、映画公開時にリンカーンがらみのノンフィクション書籍が刊行されることでしょうか。リンカーンは有名でもあまり詳しく知られていない人物ですからね。

「アンクル・トムの小屋」ストウ夫人の描いた作品は誇張され過ぎているらしいけれど、この小説が原因になって、南北戦争が起きたことと、エイブラハム・リンカーンが奴隷制度の廃止を打ちたてたのだから、無視できない小説だと思います。

もしかしたら、「アンクル・トムの小屋」も刊行されるかもしれない。あるいは、刊行されないかもしれない。こんな書き方をしたのは、嫌われている小説らしいと聞いたことがありますから。過去に旺文社文庫だけが抱えていた作品だったのを覚えています。

ヴェルヌ作品「海底二万里」と「神秘の島」の背景はもろにリンカーン大統領の時代ですから、映画「リンカーン」に興味津々です。

『メリエスの素晴らしき映画魔術』上映

ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行(Le Voyage dans la Lune)』の幻の彩色版が発見されて、修復作業を経て公開されたのは既報のとおりですが、そこに至るまでの長い道のりをメリエスの生涯とともに描いたドキュメンタリー映画が公開されます。題して『メリエスの素晴らしき映画魔術(原題:Le Voyage extraordinaire)』。明日8月25日から渋谷のシアター・イメージフォーラムを皮切りに、名古屋・大阪・京都・神戸でも順次上映されるとのこと。もちろんこのドキュメンタリーとともに、彩色の復活した『月世界旅行』も上映されますので、お近くの方はぜひどうぞ。

月世界旅行&メリエスの素晴らしき映画魔術
http://www.espace-sarou.co.jp/moon/

『黒いインド』『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』映画版

2月4日の投稿で、フランスにて先ごろ発売されたヴェルヌ映画のDVDコレクションをご紹介しました。先日ようやく到着し、収録三作中、表題の二作(いずれも白黒)を観ました。一言でいうと、このDVDは買いです。ヴェルヌファンであればぜひ入手しておくべきだと思います。値段も20ユーロ弱で手頃ですし。『黒いインド』は前評判に違わず、極めて原作に忠実で、文学作品の映像化としては極めて高い完成度です(例の自動の梯子が再現されていないところだけちょっと残念でしたが。それから湖の底が抜けるシーンはありませんでした――これは技術的に無理だったでしょうからやむをえません)。廃坑も、地下のコールシティも雰囲気たっぷりです。フクロウだけ、フィルムに直接書き込んだ稚拙な影絵ですが、これもご愛嬌。『黒いインド』には個人的に愛着があるので、とてもうれしい贈り物という感じでした。

http://www.amazon.fr/Coffret-Jules-Verne-Wilhelm-Zacharius/dp/B005XQ90BG/ref=sr_1_sc_1?s=dvd&ie=UTF8&qid=1328335325&sr=1-1-spell

そして『ヴィルヘルム・シュトーリッツ』。この比較的知られていない作品(しかもいわゆるヴェルヌ的な作風とは違う作品)をよく映像化したな、と思いますが、これも拾いものです。時代的にもちろんヴェルヌ父のオリジナル版はまだ出ていないので(1967年作なので記憶違いでなければ、ミシェルによる改作の事実も知られていない)、当然ミシェル版が原作で、時代は18世紀。シュトリーツが怪しげな美青年で、オタクの先取り的イメージを見事に表現しています。映像の遠隔伝達技術も含め(これ、ミシェル版にありましたっけ?)、映画についての映画になっているところが原作の一解釈としても新鮮です。元気なヒロインの自己主張(彼女が最初にシュトリッツを誘惑したのであり、透明化されたことも喜ぶ)と最終的にそれが否定されるのを諦念とともに甘受するかのようなニュアンスの結末など、微妙な陰影もあります。改めてミシェル版およびジュール版を読み直して比較検討したくさせる力があると思いました。近くジュール版は翻訳もされますし、これは会として一度鑑賞会を設けたいところです。

そして最後に会員の皆さんのご活躍ということで近刊をご紹介。近兼拓史さんの『80時間世界一周』が来月扶桑社新書より刊行されます。

http://www.amazon.co.jp/80%E6%99%82%E9%96%93%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E5%91%A8-%E6%A0%BC%E5%AE%89%E8%88%AA%E7%A9%BA%E4%B9%97%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%8F%E3%82%8A%E6%82%B6%E7%B5%B6%E3%83%AB%E3%83%9D-%E6%89%B6%E6%A1%91%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%BF%91%E5%85%BC-%E6%8B%93%E5%8F%B2/dp/4594065589/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1330533610&sr=8-1

メリエス『月世界旅行』彩色版

ジョルジュ・メリエスが1902年に制作した映画『月世界旅行(Le Voyage dans la Lune)』は無声映画の傑作のひとつであり、またヴェルヌ作品を(部分的にでも)原作とした映画の嚆矢でもあります。この映画の彩色版(フィルムに直接手彩色を施したもの)は長い間失われたと思われていましたが、1993年にバルセロナでフィルムが発見され、20年近くに及ぶ修復作業の末、昨年5月に開かれた第64回カンヌ国際映画祭で上映されるに至りました。

この上映に当たっては、フランスのエレクトロニカ・バンド、Air(エール)によって新たにサウンドトラックが制作されました。彼らはDaft Punkと比較して紹介されることも多い人気ミュージシャンで、映画『ヴァージン・スーサイズ』のサウンドトラックを手がけたことでも知られます。今回彼らは『月世界旅行』のサウンドトラックだけでなく、この映画に想を得た11曲入りのコンセプト・アルバムも制作しており、来月7日にそのCDがリリースされます。

このCDには、なんと初回限定特典として彩色版『月世界旅行』のDVDが付属するとのこと。いち早くこの貴重な映像を手に入れたければ、この機会を利用しない手はないでしょう。アルバムのタイトルはずばり『Le Voyage dans la Lune』。日本盤の発売日は2月8日(!)ですが、DVD再生に問題がなければアメリカ盤やヨーロッパ盤を買ったほうが安いかもしれません。いずれにしても限定盤なのでお早めに。

100年前の色が蘇った『月世界旅行』は、カンヌ映画祭を皮切りに各国の映画祭などで上映されており、近い将来日本でも映画館で観ることができるかもしれません。奇しくも昨年はメリエス生誕150周年。これを機会にちょっとしたメリエス・ブームが起こったら面白いのですが。

参考サイト:

カンヌ映画祭公式サイトより
http://www.festival-cannes.fr/fr/theDailyArticle/58490.html

フィルム修復に関わった団体のひとつ
http://www.technicolorfilmfoundation.org/

フィルム修復に関わった別の団体のYouTubeチャンネル
http://www.youtube.com/playlist?list=PL823B830FBCF59A54

エール (AIR) - EMI Music Japan
http://www.emimusic.jp/artist/airair/

DVD付きヨーロッパ盤
http://tower.jp/item/3024116/
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4318480

DVD付きアメリカ盤
http://www.amazon.co.jp/dp/B0069K3836/

DVD付き日本盤
http://www.amazon.co.jp/dp/B0067MWU3U/
http://tower.jp/item/3017099/
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4249116

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