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グランヴィルの豆本 続報!

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大変遅くなりましたが、昨日、神田神保町の東京堂書店へ行って豆本『ある蚕に捧げる弔辞』を5部納品して参りました(上の写真は自宅で撮影したものです。念のため)。初めてなので直接出向いて納品してきたのですが、豆本コーナーのご担当者様に「グランヴィルって、あのグランヴィルですよねー」とおっしゃっていただき、すんなり話が通じるところが流石に神保町だなあと嬉しくなりました。お客様にもこのような方が多いことを期待したいところです。豆本コーナーは現在、本店の3階にあります。委託手数料やその他の諸経費を考慮して、書店での販売価格は一部3700円(税込)とさせていただきました。気兼ねなく中身をご覧いただける見本誌も置いてありますので、神保町に行く機会をお持ちの方は是非一度お手に取ってください(立ち読み歓迎!)。

黒内が直参する文学フリマなどのイベントでは3000円で販売します(出展者名は「ハーシェル式」です)。また、黒内に直接通販をお申し込みされる場合は送料込み3250円です。通販ご希望の方はinfo[atmark]kurouchi.comまでメールでご連絡ください([atmark]を@に置き換えて下さい)。在庫がない場合は急いで作ります(3日ほどお時間をください)。

グランヴィルの豆本ができました(続き)

このブログはひとつのエントリにつき画像が5枚までのようなので、二回に分けて投稿することになりました。先のエントリの続きです。

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実はこの本の一番のウリはこのように丸背になっていること。色々と工夫を凝らし、たったの28ページしかない本を丸背にしてみせました(前後の白紙ページを含めても36ページです)。お陰で豆本の大先生からも大絶賛を頂きました。分かる人には分かる無駄にマニアックな仕様です。

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天小口から見るとこのような感じ。写真だけではラフな感じに見えますが、背幅と糸の太さとモコモコした本文紙の嵩(厚さではなく嵩です)の計算の妙により、何度開閉してもしっかりと形が保たれる本になっています。

ちなみにこの本は文学フリマ等のイベントにて展示・販売していますので、ご興味のある方には実際にお手に取ってご覧いただけますと幸いです。書店委託も検討中でして、詳細が決まりましたらお知らせしたいと思います。しかしまあそれにしても、もっと本の内容について説明するべきなのでしょうが上手く書けないんですよね、まったくもって申し訳ありません。ちなみにこの本の著者スタールとは編集者エッツェル自身ですから、ヴェルヌファンの皆様にもネタ的に持っていると楽しいといいますか、コレクターズアイテムになりうるのではないかと期待しているところです。……実は、巻末にはナダールが描いたエッツェルの似顔絵を収録しており、内容的にもこれまた、変なところで無駄にマニアックな豆本になってしまいました。

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そしてなんと。中身を撮影する際にいちいち自分の手で押さえるのは億劫に感じてしまい、このような物騒な香りのする書見台まで作ってしまいました。これも各種イベントで展示予定です(非売品)。

グランヴィルの豆本ができました

お久しぶりです、黒内です。私も長い間放置してしまって申し訳ありませんでした。しかしながら、忘れていたわけではありません。諸事情により『月を回って』の製本作業は中断していますが、その間、色々なことを試して自分の可能性をさぐっていました。その成果として、とりあえず以下のようなものが仕上がりましたのでご覧に入れます。

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『ある蚕に捧げる弔辞』
J・J・グランヴィル 画
P=J・スタール 文

エッツェルが出版したグランヴィルの挿絵本『動物の私的公的生活情景』の集録作から一番短いものを石橋さんに翻訳してもらい、A7サイズ(文庫本の半分ほどの大きさ)布装ハードカバーの上製本に仕立てました。

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中扉。

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本文。

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もちろん糸綴じです。実は本のサイズにちょっとアンバランスなこの太い麻糸がポイントなんです。ここでは詳しく説明いたしませんが、紙と印刷方法にもこだわっていて、伝統的な本のスタイルから決してはみ出すことなく、それでいて独特な雰囲気の味わえる造本になりました。(つづく)

目引き・かがり

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お久しぶりです。今回は二週分の授業をまとめてアップします。ディスクカッターで前小口も切り落として、本文の大きさが決まりました。余白のバランスを先生の指示通り多めに取った結果、B6より一回り大きな本になりました。もともとB6判の本として印刷製本に出す前提で組版されたデータを流用しているので、三方の余白を広く取るとノド側の余白の狭さや文字の詰まり具合が気になります。DTPの未綴じからルリユールするというのが何ぶん初めての体験なので色々と上手くいかない部分も出てくるわけですが。

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これは目引きが済んだところ。本かがりでは綴じ糸だけでなくフィセル(背綴じ紐)を使うので、紐が収まるようにV字型の溝をつけています。しかしながら、いろいろな作業の為に動かしているうちにまた背の部分が少しふくらんできてしまいました。(そのせいでちょっと目引きがしづらかった)

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四週間に渡ってオイルに浸けておいた牛骨へらはこのようになりました。固くてつるつるで、先っぽの薄いところはほんのすこし透き通って見えます。

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ようやくかがり台の登場です。日本製のシンプルなかがり台はみんな上級生の方々が使用中だったので、私はこのヨーロッパ製の旧式タイプを使うことになりました。アンティークな雰囲気がス・テ・キ♥……と言いたいところですが、稼働率が低いらしくネジ状のパーツの滑りがすっかり悪くなっており、なんと、組み立てるだけで15分以上もかかってしまいました。ギャフン。お陰で8折目までしかかがれませんでした。

昔は製本家になれるのは男性だけで、工房の中で女性の仕事といえばかがりだけだったそうです。これはアニー・トレメル・ウィルコックス著『古書修復の愉しみ』にちらりと書いてあったことで、私にはそれ以上詳しいことは分からないのですが、デニス・ディドロ編纂の『百科全書』における製本工房の挿絵からも確かにその様子を伺い知ることができます。
日本語で読める数少ない西洋式工芸製本の指南書としてジュゼップ・カンブラス著『西洋製本図鑑』という本がありますが、その中で「何冊もの本を連続でかがる際には一冊ごとにいちいちフィセルを切らず、一冊かがり終わったらその上に次の本を重ねてかがっていって後からフィセルを切るべし」などというような感じのことが書かれていて、最初に読んだ時にかなりビックリしました。その上、更なるスピードアップを図る場合の合理的なテクニックとして「二丁抜き綴じ」なんてものまで載っており、詳しい説明は割愛しますけれど、この糸かがりという仕事にはどことなく手製本が趣味や芸術ではなく《産業》であった時代の名残がつきまとっている感じが拭えなくて、なんとも言えず感慨深い気持ちになりますね(いや、私だけかもしれませんが)。かつてフランスには「かがり台が嫁入り道具」だった時代が存在したなどとも言われているようですが、一体それはどの程度の階級の女性たちの話なのでしょうか。

ディスクカッター登場

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冬休みを挟んで久々に製本の続きです。3週間ほどプレスしたせいでぺったんこ。二つ折りの紙の固まりがすっかり直方体っぽいシルエットになりました。さて問題は、大きい紙に印刷したので三方を断裁しなければならないということ。私はてっきり糸かがりしてからカッターナイフでコツコツと化粧断ちしていくのかと思っていたのですが(実際、半年前に他の教室で丸背の豆本を習ったときはその方式でした。非常にやりがいのある作業で面白いんですが、職人的スキルが要求されます)、

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……え? こ、このような道具で一枚づつ切れと……(ポカーン)。

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やってみたら非常に楽でした。まだ天と地の二方しか断裁しておりませんが、全ページを元通り重ねてみたところ、ガタガタ小口にはならず。見た目は充分いい感じ。最終的にヤスリがけをすればツルツル小口にもできると思われます。断然いいじゃん! 

写真には写っていませんが。教室の備品であるこのディスクカッター、手前のバーの側面の右側のほうに小さい紙が貼付けてあるのに気付いてしまいました。それで「わずかな厚みとはいえ、そのせいできちんと直角に切れなかったら嫌だなあ」などと思いながら作業していたんですよ。しかしながら、切り終わって紙を揃えてみて、これといって特に違和感がなかったのがこれまた不思議でした。

……、そして、帰宅してからこのディスクカッターについて検索してみたら、amazonのカスタマーレビューにこんな文があるのを発見。

手前のガイドは切断面と直角であるべきだが、ガイド自体が変形していて直角に切ることが出来ない。私は紙を貼ってガイドの歪みを調節して切っている。

岡本先生がこんなところに(笑)。ありがとうございます、お陰さまで直角に切れました。

さて問題は、前回オイルに浸けておいたへらを回収してくるのをコロッと忘れていたこと。帰りの電車の中で気付きましたが、流石に一ヶ月近くも浸けっぱなしは心配です。

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