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会則の変更

まず先の大震災で被害を受けた皆さまに心よりお見舞い申し上げたいと思います。茫然としているうちに今日まで時が過ぎていた気がします。

そんな中、今月20日に研究会の総会を開催いたしました。床には青いビニールシートが敷かれ、天井板が外され、ひどく寒い慶應日吉キャンパスの一室で、昨年度の総会で決まった方針に基づき、会則の変更が詰められました。特に重要な変更点は、会費が500円から1500円となり、その年度の会誌一部の代金も含まれることになった点です。会員になると自動的に会誌が配布される形になりますが、注意していただきたいのは、あくまでその年度の会誌であること。会費納入の年度初めと前後して出される前年度の会誌ではありません。来年度についていえば、現在編集中の会誌第5号ではなく、第6号が会費の対象となり、第5号は別途ご購入いただくことになります。また、会報Courrier du czarは休刊とし、前年度の総会の報告とその年度の総会の案内の二通のお知らせがそれぞれ年度初めと年度末に送付されるのみとなります。例会のお知らせなど、事務連絡はすべてメーリングリストを通じて行います。メーリングリストには一度でも会員登録された方は、ご本人からその意志が示されない限り、そのまま登録されますが、会誌そのほかは送付されません。また、メーリングリストに登録することを希望されない会員の方のために、会の公式サイトにも同じ内容を掲載いたします。今回は移行期ということで、今2010年度の会員の方全員に総会の報告を四月に送付いたします。そのうち、2011年度の会費を納付された方にのみ、会員証を同封いたしますので、ご確認ください。また、新規に入会を希望される方は、会費を郵便振り込みで納入されると同時に、研究会公式サイトの入力フォームにご連絡先をご記入いただきますようお願いいたします。

また、会運営の効率化を図り、新たに事務局長のポストを設け、その下に実務を担当する会計事務とHPならびにML管理責任者を置くこととなりました。このお二人には特に煩瑣な事務処理をお願いすることになりますが、よろしくお願いいたします。会員の皆さまにおかれましてもおふた方にぜひご協力ください。

日本ジュール・ヴェルヌ研究会会長
石橋正孝

新刊情報

ある会員の方から教えていただきましたが、アルベール・ロビダに関する論集がフランスで刊行されたそうです。ヴェルヌに対する言及もかなりあるとか。近く取り寄せたいと思います。

http://www.robida.info/documents/fiches_lecture/de_jadis_a_demain_2010.html

また、〈驚異の旅〉にもっとも多くの挿絵を描いたことで知られるレオン・ベネット(この人の姓はどう発音するのかよくわからなくて、綴りに合わせて最近は無難にブネットと表記するようにしていましたが、この間フランスに行った時にヴェルヌ学会に参加した際、耳に入った限りでは、ベネットでいいみたいです)に関する本が近く出るとのことで、予約受付が始まっています。一週間後にアミアンでヴェルヌ学会があるのですが、この本の著者であるベネットの子孫の方も発表される由。アルフォンス・ド・ヌヴィルに関する大きな本(ちょっとした画集です)やエドゥアール・リューに関する本も出ていたとはいえ、まさかベネットで出るとは思わず、嬉しい驚きです。練馬区立美術館のグランヴィル展や、パリで開催される予定になっている大規模なドレ展も示すように、こうしたビッグネームの再評価に引っ張られる形で、彼らの陰に隠れていたマイナーな挿絵画家たち(しかし、彼らこそ、本来の意味における挿絵画家でしょう)にも光が当たりつつあるようです。

http://www.leonbenett.fr/

ヴェルヌとは直接関係ありませんが、最近読んでおもしろかった本をご紹介。秋草俊一郎『ナボコフ 訳すのは「私」』は、まず著者の若さに驚き、東大総長賞受賞に二度びっくりし(そんな賞、初めて聞いた)、いざ読み始めてリズムの悪い日本語に閉口したのですが、第三章が素晴らしかった。この部分だけでも買って読む価値があります。後書きによれば、原型は卒論で、それを十年近く彫琢してきたとのこと、確かに、人文学の領域では、投じられた時間と労力によって輝くものがあるのです。そして、卒論という初発の時点でこれだけの原石が得られれば、博士論文ですらその後産にすぎないわけで、これが才能というものでしょう。論じられているのが短編ということで、積読になっていたナボコフ全短編を引っ張り出して対象作を読んでから読みましたが、やはりナボコフは「今こそ読まれるべき作家」に今後ますますなっていくような気がしました。

ある会員の活動 その5

うっかりして、2月中に出すはずの、総会の出欠はがきを出し忘れていた。

総会は3月20日である。日曜日なので、出席できる。

総会前に、美術展を観に行くイベント企画もあるのだが、こちらは所用あって行けない。

はがきとともに、会費の払い込みをする。今回から、来年の会誌代も会費に含まれる。

来年の会誌というのは、先日校正した第5号の、その次の第6号のことだ。

何においても、経営の根本は資金繰りである。前回総会で決まったのだが、ひとつの知恵であろう。

特集内容も全く未定であるが、作るぞ、という決意表明でもある。

第5号の代金も合わせて払い込む。読み返し用と、保存用の2冊を買うことにしている。

突然根本的なことを言うようだが、ヴェルヌという作家は実に味わい深い作家であると言えよう。

いざ論じようとすると、単純な幻想作家・冒険作家のイメージはけし飛び、多面的な相貌が現れる。

まだまだ、論じられるべきことは多い。

それに、ヴェルヌの全貌はまだまだ日本に紹介されていないということである。

一人で気張ってもしょうがないのだけれど、総会の前後には、今後の活動に思いをはせるのも、会員の務めであろうか。

ある会員の活動 その4

いろいろあって、ここに投稿するのは随分久しぶりになった。

前回、あれだけ言っていた校正はどうなったのかというと、実はとっくに終わっている。

他の寄稿者の方お二人の分と、自分の分2本をやった。

誤字脱字、「てにをは」などのケアレスミス、文意の不明点などをチェックし、訂正し、コメントする。

私の寄稿は、他の方がチェックしたものが廻ってきて、それを自分で再チェックする作業となる。

こうしてみると、なくて七癖、ではないが、人にはそれぞれ書き癖のようなものがある。よく使うフレーズ、というのもあるが、それ以外のくせもある。

たとえば私の場合、「・・・かもしれない」という表現をよく使う。

これを、「知れない」とよくまぜこぜにする。

文章上は、どちらかに統一することが求められるが、なんとなく、気分で使い分けてしまう。

最近は編集長に送る前に、検索して修正することを覚え、サルより毛が三本多いことを証明しようとやっきである。

それでも、ケアレスミスは人一倍多いようだ。orz

仕事帰りにタワーレコードまで行って桑田佳祐「MUSICMAN」の初回限定版がまだあったので買う。

明治通り沿いに駅の方へ行くと、駅の構内にかかった岡本太郎の「明日の神話」が割とよく見える。

そういえば、今日生誕100年らしい。

会員の皆さんの最近のご活躍

当会前会長の新島進さんがジャック・ボドゥ『SF文学』(白水社、文庫クセジュ)を上梓されました。極めてコンパクトにSFの歴史をまとめていて簡便な一冊です。もちろんヴェルヌにも一節割かれています。巽孝之氏の帯文にいわく「今日望みうる最良のSF入門書」。

また、これは自分自身のことなので恐縮ですが、ボケル&ケルン『罵倒文学史――19世紀フランス作家の噂の真相』が先月に拙訳で東洋書林より刊行されました。このインパクトのあるタイトルは編集者の方のアイデアの勝利ですが、内容は罵倒のアンソロジーというよりは、文壇ゴシップを「憎悪」というフィルターにかけて19世紀の「文学場」を描きだすといった趣向の読み物です。したがってヴェルヌは登場しますが、ほとんどついでです。改めてヴェルヌがこの当時いかに文学的にマージナルな存在だったかがよくわかりますし、裏を返せば、本当はこういう世界に行きたかったのか、ということが理解できるようになっています。ちょっとお値段は張りますが、作家たちの似顔絵も入って、話のタネにはなるかと思います。

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