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新刊情報

ある会員の方から教えていただきましたが、アルベール・ロビダに関する論集がフランスで刊行されたそうです。ヴェルヌに対する言及もかなりあるとか。近く取り寄せたいと思います。

http://www.robida.info/documents/fiches_lecture/de_jadis_a_demain_2010.html

また、〈驚異の旅〉にもっとも多くの挿絵を描いたことで知られるレオン・ベネット(この人の姓はどう発音するのかよくわからなくて、綴りに合わせて最近は無難にブネットと表記するようにしていましたが、この間フランスに行った時にヴェルヌ学会に参加した際、耳に入った限りでは、ベネットでいいみたいです)に関する本が近く出るとのことで、予約受付が始まっています。一週間後にアミアンでヴェルヌ学会があるのですが、この本の著者であるベネットの子孫の方も発表される由。アルフォンス・ド・ヌヴィルに関する大きな本(ちょっとした画集です)やエドゥアール・リューに関する本も出ていたとはいえ、まさかベネットで出るとは思わず、嬉しい驚きです。練馬区立美術館のグランヴィル展や、パリで開催される予定になっている大規模なドレ展も示すように、こうしたビッグネームの再評価に引っ張られる形で、彼らの陰に隠れていたマイナーな挿絵画家たち(しかし、彼らこそ、本来の意味における挿絵画家でしょう)にも光が当たりつつあるようです。

http://www.leonbenett.fr/

ヴェルヌとは直接関係ありませんが、最近読んでおもしろかった本をご紹介。秋草俊一郎『ナボコフ 訳すのは「私」』は、まず著者の若さに驚き、東大総長賞受賞に二度びっくりし(そんな賞、初めて聞いた)、いざ読み始めてリズムの悪い日本語に閉口したのですが、第三章が素晴らしかった。この部分だけでも買って読む価値があります。後書きによれば、原型は卒論で、それを十年近く彫琢してきたとのこと、確かに、人文学の領域では、投じられた時間と労力によって輝くものがあるのです。そして、卒論という初発の時点でこれだけの原石が得られれば、博士論文ですらその後産にすぎないわけで、これが才能というものでしょう。論じられているのが短編ということで、積読になっていたナボコフ全短編を引っ張り出して対象作を読んでから読みましたが、やはりナボコフは「今こそ読まれるべき作家」に今後ますますなっていくような気がしました。

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