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幻の島々

Jules Verne Pageの掲示板以来の読者の方々は、インターネットサイト「幻想諸島航海記」に親しんでおられると思うので、これまた今更ではありますが、近野不二男『北極奇談 幻島の謎』や、前述サイトの管理人である長谷川亮一氏による『地図から消えた島々』を取り寄せて繙読していたところ、前者でヴェルヌの『毛皮の国』がなぜか『コケの国』として紹介されており、後者に次の記述を発見。

「なお1801年10月、スペインのガレオン船エル・レイ・カルロス号のクレスポ船長は、北緯32度46分・東経170度10分の地点(犬吠崎の東方約2700キロ)で島を“目撃”した、と報告した。全くの偶然なのだが、このころの海図には、この近くにリカ・デ・プラタ島が描かれていた。そのため、この島はリカ・デ・プラタ島そのものと見なされ、「クレスポ島」という別名が与えられることになった。ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万里』には、潜水艦ノーチラス号がこの島に立ち寄る場面がある」

この「リカ・デ・プラタ島」とは、「銀に富む」という意味で、「黄金に富む」という意味の「ロカ・デ・プラタ島」とセットになった群島で、日本の遥か東方にあって、金銀を豊かに産し、「色白で豊かな住民が住む」といわれた、十六世紀後半以来の伝説の島です。『海底二万里』にもほぼ同様の記述がありますが、ほぼデュモン・デュルヴィルの『世界周航記』の引用です。それが元々は海図に書かれていた想像上の島(そして、当然ながら存在しない島)だったとは。