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未来小説?

またまた細かい話を……。雑誌『水声通信』が休刊ということで、はなはだ残念に思いつつ、改めてヴェルヌ特集号をちょっと見直していて、「フリッツ・フラック」の翻訳の、最後まで氷解しなかった疑問箇所に目が留まり、あれ、これって……と思ったわけです。

「その時代にはまだ瀉血が行われていた。そして、現在と同様、医者たちは瀉血によって、まだ生きのびるはずの患者を卒中から救っていた」

ここ、ゲラでも編集者から論理的におかしいのでは、と指摘を受けて、しかし、原文通りなのでそのままにしたのですが、そう、これ『ロビュール』と同じように考えればすっきりします。つまり、「その時代」って未来じゃないでしょうか……この話、おとぎ話風なのでてっきり遠い過去としか思わないのですが、そのことによって「未来を過去形で書く」背理が拡大されているのではないか……。というか、そうとるしかちょっとほかに解釈のしようがない気がします。みなさんはどう思われますか、未来小説としての「フリッツ・フラック」!

9月11日の読書会は一般の方でも参加可能です。1941年ソ連版の原作に忠実な映画『神秘の島』など、ちょっと珍しいものもお見せできます(といっても、まあネットで入手可能なんですが)。