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『八十日間世界一周』展示+小ネタ

夏頃から、この春に新装なった立教大学池袋図書館地下一階の展示スペースで『八十日間世界一周』のささやかな展示が行われ、解説を担当しました(その打ち合わせで近くの江戸川乱歩記念館を案内していただき、一般公開されていない土蔵内の書庫を見せていただいてちょっと興奮しました)。当然、立教関係者しか見られず、僕自身、池袋キャンパスに行く用事があまりないので、つい先日初めて覗きに行ったような次第ですが、解説パネルのPDF版がいつの間にか公開されていました。

http://www.rikkyo.ac.jp/research/library/_asset/pdf/archives/exhibition/80days.pdf

展示内容ですが、目玉は『八十日間』のエッツェル版初版。挿絵なしの通常単行本で地味ながらなかなかのお値段でこの企画のために購入されたもの。僕も初めて手に取りました(今はもちろんガラスケース内です)。それ以外にペリー・フォッグの世界一周記がなぜかもともと所蔵されていたらしく、また、雑誌『世界一周』は全巻貴重書書庫に収められている模様。

さて、予告した小ネタですが、大したことはありません。ブレーズ・サンドラールが子供時代にヴェルヌを愛読し、作品のあちこちに言及があったり、ものによっては発想源になっていたりすることはこれまでも指摘されていました。過日、必要があって『シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌ』を読んでおりましたら、旅芸人を襲うヴェルヌの盗賊、というような表現が出てきて、「おっ」と思ったわけです。早速註を見ると、サンドラールとヴェルヌの関係、そして、問題の個所について、『ミシェル・ストロゴフ』と『クローディウス・ボンバルナック』が混同された結果、とあって、「惜しい」と思いました。これだとロシアという舞台にこだわりすぎで、「旅芸人」を襲う盗賊、と言えば、『セザール・カスカベル』の印象的な挿話をまず思うべきでしょう。こんなマイナーな作品まで読んでいたサンドラールにちょっと感動し、『緑の光線』ねたで短編も書いているらしいので、ちょっとヴェルヌとの関係を追いかけてもいいかも、と思いました。実は両者の関係の研究ってほとんど見当たらないのです。kurakataさん、やりませんか?