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ある会員の活動 その7

5月19日(水)NHKBSプレミアムで放送された「世界ふれあい街歩き」で、ヴェルヌの故郷ナントをとりあげていた。

海外のある街を1日かけてぶらりと一周する、というコンセプトの紀行番組である。目の高さにハイヴィジョンカメラを据えて徒歩移動する(コンサート中継用のぶれない機材で、腰で支えているらしい。撮影には何日かかけているようだ)ため、視聴者は実際に街を散歩している気分になる。

自宅と会社以外にほとんど移動しない私はこの番組が割と好きでよく見ている。ホームページの予告にはヴェルヌのことも書かれていたのだが、あまり期待しないで観た。

案の状、「ナントの男は夢想家で、女は働き者」などという、本当かどうかわかりもしないテーマのだしにされていたし、ヴェルヌ博物館がちらりと出てきたのはよかったが、どちらかといえばパフォーマンス集団「ラ・マシン」を紹介する枕になっていたし、その際映っていた挿絵には『80日間世界一周』というテロップが付いていたが、どう見ても『征服者ロビュール』のアルバトロス号だった。

せめてラ・マシンの巨大な象のギニョールを紹介する時、『蒸気で動く家』の挿絵を隅に入れてほしかったが、高望みというものか。

私市先生が紹介しているヴェルヌのエッセイ「青少年時代の思い出」によると、ヴェルヌ一家はナント市内で10歳のころ別荘を手に入れている。(最初、「引っ越しをしている」と書いたが、筆者の読み違いであった。コメントを参照)。シャントネという、市の中心部から若干離れた丘の上のようだが、そこまではルートに入らなかった。

そんなわけで、会員としてはほぼ何の収穫もなかったが、「ヴェルヌが生まれたのはこの川岸だ」と住民が語っていた河畔の風景は見ることができた(この住民の発言も相当アバウトであった。コメント参照)。当時とは違っているだろうけれど。

もともとそんな番組ではないのである。だから期待しなかったのだ。

この番組の面白さは、わざわざ人のいない路地に入りこんでいくような流浪の感覚にある。クロアチアだったか、路地を抜けると集合住宅の中庭で、午後の日差しの中で風に植え込みが揺れている。誰もいない、そんな様子をしばらく映していた。

いったこともない街で、一人ぼんやりしているような、NHK総合でも金曜日の22時という時間に放映している、考えてみれば変な番組なのだ。

それでも、ナントの風景などNHKでしか放送しないだろう。後半生の居住地アミアンはまだやっていないようなので、ぜひ今後とりあげてほしい。

NHKでは他にも、以前「世界イチバン紀行」という番組でトリスタン・ダ・クーニャ島をとりあげていた。『グラント船長の子供たち』で主人公たちが途中立ち寄る島であるが、今でも他の陸地からの距離が世界で最も遠い島だそうだ。まだ一度しか録画を見ていないが、『グラント』の記述と比較しながら見直すこともしなければならない。

さて、会誌第5号はついに完成。昨日郵送されてきた。前にも書いたが、こうして本になると感慨深い。編集作業は相変わらず熾烈を極めたようで、寄稿するだけの者としてはひたすら感謝。表紙も『海底二万里』特集にふさわしい迫力に仕上がっている。

自分の文章は今読むといろいろ反省があるが、また次回につなげていきたい。