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会誌6号合評会  ある会員の活動22

光陰矢のごとし(笑)。

7月1日に合評会があってからもう2週間以上過ぎてしまった。
とりいそぎ報告しておこう。

場所は日吉、慶応大学キャンパス内の会議室で13時半から行われた。

当日は有名進学塾の模試が行われていて、キャンパスはごったがえしていた。

最近こういうのみんな保護者同伴なのね。・・

それはともかく、9名が参加し開始。

合評会の前に石橋会長から直近情報。
まず、プレイヤード版ヴェルヌの実物を閲覧。プレイヤード版には販促用のアルバムというのがあって、会長が買っていた1冊をその場で購入。やった。
図版を見ているだけで楽しい一冊。本書も買わねば。

それから、石橋会長がフランスのジュール・ヴェルヌ協会の編集委員になったとのご報告。長年居座っていた会長が引退し、世代交代した結果とのこと。

長年閉鎖的だった本国協会も広く門戸を開き、会誌も世界から投稿を募るようになっていくとのこと。ただしフランス語。

いずれ世界のヴェルヌサークルのネットワークが充実していけば、ヴェルヌ・サミットなどということも考えられる。夢膨らむ話である。

合評会は特集から順次それぞれが意見を述べ合い、なごやかに進んだ。

個人的には、やはり倉方健作氏のポール・クローデルについての投稿が興味深かった。以前、校正していたのはこの原稿。
思わず、クローデルのいろいろな文章を読んで、ますます興味を深めた。

合評会でも言わなかったと思うが(言ったかな)、クローデルが大恐慌時代のアメリカ大使として、本国に定期報告している書簡集なるものもなぜか翻訳がある。
面白いのは、報告している相手の外務大臣があのアリスティッド・ブリアンだということ。カトリック信者のクローデルにしてみれば、ブリアンは政教分離政策の立役者でもあるので、心中いかばかりであったか。

ひとつひとつを再現するのはきりがないのであきらめるが、特集・自由投稿とも充実しており、話は尽きなかった。

もうひとつ、実に面白かったのはソランジュ嬢と六助君の未訳ヴェルヌ作品の紹介記事。残念ながらご本人たちは来なかったが、代理人らしい新島氏から名前の由来など気づかなかった細部を知らされ、この連載に賭ける並ならぬ決意を感じ取った次第である。次回以降もおおいに期待したい。

17時頃終了。その後、日吉駅近くの喫茶店で簡単に食事。生ビール飲んでしまった。

ところで、昨日『モンテ・クリスト伯』到着。厚っ。形は豆腐に似ている。
意外にも横書きであった。しかし、装丁を見ると、洋書のペーパーバックを彷彿とさせる作りである。

最近個人的に、なんで日本でペーパーバック的な本ができないのか考えていたところであった。
最近の文庫本は厚い割に高いし、情報量も少ない気がする。だったらペーパーバック的な本で、鞄に入ればいいのである。

活字が欧文並には小さくできないのだろうかな、と思っていたのだが、これなら何となくできそうな気がする。
まあ、『モンテ・クリスト』は規格外の量なのだが、普通の長編なら判型を小さくして鞄に入るようにしてもらえないものか。

しかし、買ったはいいがいつ読むのかなあ。結局『月は無慈悲な夜の女王』も途中だし、ジーン・ウルフも読みかけ。石橋さん推奨のシラノ『日月両世界旅行記』も手がつかない。
新島氏に進めた癖に『ゴースト・オブ・ユートピア』も読み通せていないのに、なぜかヴァージニア・ウルフが面白くて『灯台へ』を読んでしまった。

メタポゾンも買いましたけど、この倍程度の分量なら一挙掲載できたのでは・・

由良君美『椿説泰西浪漫派文学談義』が復刊してしまったのでこれもついつい読み始めてしまったし、なぜかバートランド・ラッセルを読まなければならないと思い詰めてエッセイや入門を買い込む。しかし読み始めると眠い。・・

岩波文庫の重版でトーマス・マン『ファウスト博士』も出たし、それこそもうじき後藤明生『この人を見よ』が出てしまうのだ。いったい私はなにがしたいのやら。

コメント一覧

sansin 2012年07月17日(火)23時54分 編集・削除

あ、書き忘れましたが、牢獄で何でも作ってしまうファリア神父は、もしや遠くサイラス・スミスに影響を与えているのでは。
(これは誰か指摘済みかな・・)

ishibashi 2012年07月20日(金)10時52分 編集・削除

ようやく今学期の授業がほぼ終了し、途中で読むのをやめていたLe dernier amour d'Arsene Lupin(アルセーヌ・ルパン最後の恋)を読了。最近発見された幻の遺作で、最後のルパンものにしてルブラン最後の作品。いかんせん敵が小物過ぎて最後まで盛り上がりを欠いているのですが、はっきりいってそんなことはどうでもよくて、これは遂にルパンが年貢を収めるという話なのです……しかも、いわば少年探偵団を率いるルパンの姿に、あのルパンがこれほど父性愛を発揮するとは、と彼に永遠の少年を見ていた長年のファンとしては目頭が熱くもなるわけですが(大袈裟……)、「最後にして唯一の愛」の相手に最後は押し切られるツンデレぶりに、結婚を報告されたルパンの乳母(最後まで名前が出ませんが、ヴィクトワールですよね)じゃありませんが、Ce n'est pas trop tot(うまい訳が思いつきません)と呟いてしまい、五十歳の怪盗紳士に対してなぜか母親の心境まで味わってしまう、という、これはこれでこれしかないなという締めくくりなのです。個人的には、『アルセーヌ・ルパンの数十億』の、ロブ=グリエの『反復』を思わせる終わり方の方が好きなんですが、ある意味終わりようのないこのシリーズの複数の終わりをこのように終わらせたルブランの側の必然性も納得されるんですね。

マンの『ファウスト博士』は面白いですよね。こんな小説をよくもまあ二十世紀半ばにもなって書いたな、と。

ishibashi 2012年07月20日(金)12時09分 編集・削除

プレイヤード版ヴェルヌの書評が出ましたが、ヴェルヌ作品それ自体についての批判になっていて、要するに、「驚異の旅」全部のプレイヤード入りでなかった段階で、作品選択を間違えている、というもの。この人によれば、収録四作中、今も読むに堪えるのは『神秘の島』だけ、ということで、『氷のスフィンクス』に至ってはさんざんにこき下ろし、註も『神秘の島』の註だけがいい、としていますが、この作品を担当したのは編者中唯一のヴェルヌ研究者のマリ=エレーヌ・ユエなので、作品自体の問題ではないでしょう。どうもプレイヤード版自体に対する書評になっていないようで(編集に問題があるのは確かだろうとは思うので、その点を踏み込むべきなのですが、ヴェルヌ研究者でなくても指摘できることはあったはず)、残念です(挿絵が小さくなって残念とかいわれてもね……)。

http://laquinzaine.wordpress.com/2012/07/12/verne-en-pleiade-une-bonne-idee/

sansin 2012年07月20日(金)21時43分 編集・削除

『ルパン最後の恋』、読みたいですね。早く邦訳を。

そう、ルパンも『813』『虎の牙』を新訳一巻本で続けて読む、というのはいいかも知れない。

ところで個人的には実は、今後一番古びてしまうのは古典的「傑作」として(相対的に、ながら)完成度の高い『神秘の島』ではないかと思っているのですが。

『グラント』や『海底』を今は読むに耐えないなどと言っている人がいたら、もう少しよく読んでごらん、としか言いようがありませんね。

欧明社に注文していたプレイヤード版、入荷したとの連絡あり。来週にはゲットです。

ishibashi 2012年07月20日(金)23時41分 編集・削除

『813』の忠実な映像化のDVDを今日入手したところです。実は大学院時代、ルパン研究会というのを同じ研究室の仲間とやっていたんですよ。その時、発表順に原書で読み返し、実に面白かった。ちょうどフランス語で本が読めるようになったころで、ルパンは難易度的にぴったりでそれだけでも楽しかったんでしょう。

『中野重治書簡集』を編者の竹内栄美子さんのご厚意で出版社代送の著者価格で入手しました。箱入り。宛先を見ているだけでなんというぜいたくな時代、という感じです。中野の文章はやはり面白いなあ……。泰淳の文章とともに、こういう文章を死ぬまでに一度書けたら、とこれは見果てぬ夢のまた夢…… 後藤明生はあと四日か、待ち遠しい。