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「会誌」6号感想

しばらく、ノートパソコンの不調で修理に出していましたので、会誌の感想を書くのが遅れてしまいました。

「会誌」6号、デザインも一新しただけでなく、かなり厚くなりましたね。synaさんが何らかの都合で休筆されたようですが。SF作家の新井素子さんのエッセイから、読んでいて楽しくなってくるのを感じていました。
「漂流しているのに、気分的に漂流していない…」のコメントに「あっ、そういえばそうだようね」と掛け合いをしたくなる心境でした。

 次回から他のSF作家にも声を掛けられたらいかがなものでしょう。なんか楽しさがほしいというか…。

 (島村山根)「ネッド・ランドの怒り」を読ませていただいているうちに、連鎖反応で思い出すものがありました。80年代にNHK-FMで放送されたラジオドラマ「海底二万リーグ」(村上啓夫脚色)10話連続。

 このラジオドラマの中で、ネモ船長はネッド・ランドに「仲間にならないか」と声をかけるシーンがあったのが意味ありげでした。原作にはないシーンだったので、気になり当時調べてみて分かったことがありました。
 この時に初めて、カナダのケベックはフランス領だと知りました。その後、「海底二万里」のドラマと同時代でしたか、イギリスはインドネシアに進出した同時期に、ケベックにも殖民地化しようとしたらしい。

 ネモ船長はインド人だと設定した上での脚色だったのでしょう。この時に初めて、原作でネモ船長がネッド・ランドを軽蔑している理由が分かった気がしていました。「ネッド・ランド、独立精神がなかったのか」という意味合いから、ラジオドラマで「仲間にならないか」と言わせたのかなと思いました。
 ネモ船長には、ネッド・ランドとアロナックス教授が親しくしている光景に違和感を感じていたのだろうかと、勝手な推測をしていました。

 ラジオドラマとして脚色された村上啓夫氏は、過去にハヤカワポケットミステリー(新書)「海底二万リーグ」を翻訳されています。かなり削られていますが、ラジオドラマ化の脚色を依頼された時、翻訳者ならではのこだわりを入れられたのでしょうね。

コメント一覧

sansin 2012年06月08日(金)22時22分 編集・削除

ああ、やはりそういう翻案があったのですね。知りませんでした。
ヴェルヌの物語をふくらませようとすると、どうしても人間関係をいじりたくなるようです。そこで、いろいろ皆想像するのでしょうね。

ネッドの謳歌する自由は、国際政治の現実を見ない偽りの自由にすぎない、そうネモが考えていたかも知れないというのは鋭いご指摘と思います。ネッドがカナダ先住民の血を引いているのかははっきりしませんが。

もっとも、原作からは、単なる軽蔑では片付けられないネモとネッドの間の強い感情を感じました。それであんな思いつきを書いてみたのです。

会誌で書かれていた『文明の帝国』は、当時の風潮をヴェルヌに集約させすぎの感はありますが、上記のような歴史的視点を深めるためにはやはり必読の書だろうと思います。

Cyrus Harding42 2012年06月08日(金)23時01分 編集・削除

 先ほど、ケベックの歴史を確認するためウィキペディアで調べていました。思い込みというのは怖いものです。「海底二万里」と同時代だと書いていましたが、「フレンチ・インディアン戦争」(1754年~1763年)つまり、100年のズレがありました。

 またインドネシアではなく、西インド諸島だと分かりました。この「フレンチ・インディアン戦争」では1759年ケベックが陥落。1760年モントリオール陥落。この時、フランス領カナダの拠点は壊滅したとありました。

 ここまで分かると、「海底二万里」は1866年に物語が始まっていますから、ネモ船長がネッド・ランドに冷たい目を浴びせている理由がさらにはっきりしてきました。

 ここまで書くと、「ネッド・ランドの怒り」に対して批判しているような書きかたになってきたような感じがしましたが、わたしは最初から純粋に、自分の書き込みの訂正から分かったことを書いただけです。気分を害されたら申し訳ありません。
 

ishibashi 2012年06月09日(土)00時37分 編集・削除

ちなみに、ヴェルヌは『名無しの家族』でケベック独立闘争を描いています。ヴェルヌには珍しい歴史小説であり、主人公の「名無しのジャン」は、少なくともそのあだ名だけはネモに通じるものがあります(全然似ていませんが)。この暗い小説、しかしながら、ケベック独立闘争を描いた同時代の多くの小説の二番煎じにすぎず、あまり独自性はない、とある先生がおっしゃっていました。

SF作家に声をかけたいのはやまやまですが、財政上の問題から毎回はちょっと無理ですね。今回は色々とタイミングが重なったので例外とご理解ください。

ishibashi 2012年06月12日(火)16時52分 編集・削除

Jules Verne blogに紹介されました。やや古い情報も混じっておりますが……

http://www.jules-verne-news.com/2012/06/japon-la-societe-jules-verne-publie-le.html

そろそろヤフオクでも販売を開始せねばと思いつつ、ずるずるそのままになっています。今週末あたり、少し時間ができれば。