『地球から月へ』第6章にこんな一節があります。
月が、地球のまわりを公転するときに通る線については、ケンブリッジ天文台があらゆる国の無知な人たちにもわかるように、ていねいに教えてくれた。この線は円ではなくて楕円の凹曲線で、地球がその中心になっている。
鈴木力衛訳(集英社)
地球をめぐって公転する間に月が動いていく軌道については、これが凹状の曲線を描いていることを、どんな国の蒙昧漢にでも分かるようにケンブリッジ天文台が説明していた。円軌道ではなくて、ふたつの焦点のひとつを地球とする楕円軌道なのである。
高山宏訳(ちくま文庫)
月が地球の周りを楕円を描いて公転しているのは周知の事実ですが、その軌道が「凹(状の)曲線」とはどういうことでしょうか。例えば「凹多角形」と言った場合、これは「凸多角形」の対義語で、180度より大きい角をもつ多角形を意味します。同様にして「凹曲線」と言った場合、どこか凹んだ箇所のある、例えば瓢箪の輪郭のような曲線ということになりますが、楕円はもちろんそのような曲線ではありません。
原文を見てみましょう。
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ishibashi 2010年12月26日(日)12時10分 編集・削除
この小説、現在新訳を準備中ですが、手始めに私用に『月を回って』(kurouchiさんが製本作業中の本です)とセットで椎名さんに組んでいただき、自費で小冊子化した際に、この部分の誤訳をご指摘いただき、事なきを得ました。心強いです。