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トーベ・ヤンソン

ごく小さいころコミックやアニメを見ていたせいで、いまだにムーミンが結構好きだ。

ヤンソンの原作は(と言っても、弟ラルフに引き継いだコミックと並行しているから、コミックの原作というわけでもないそうなのだけれど)、もう少し大きくなってから読んだ。

今、講談社文庫で新装版が出ているのだが、シリーズ第一作『小さなトロールと大きな洪水』が今月出て、読んだことがなかったので本屋でちょっと立ち読みした。

原書は1945年に出てすぐ絶版になったものを、1991年にヤンソンの序文つきで復刊したというもので、1999年に青い鳥文庫に訳されたものの文庫化だという。そんな経緯も初めて知った。

問題はその序文である(冨原真弓訳)。

≪頭をひねったあげく、本のタイトルは、「パパをさがすムーミントロール」――「グラント船長をさがす子供たち」にならって――にしたかったのですが≫

     なんだって ! ? ! ?

≪この物語は、わたしが読んで好きだった、子供の本の影響をうけています。たとえばジュール・ヴェルヌやコッローディ(青い髪の少女)などが、≫・・・

なんと、ヤンソンがヴェルヌ好きだったとは・・・

本屋で呆然と立ちつくし、混乱した頭の中では月から飛行おにが飛んできたり、氷の世界でモランがほえたり、雷電を受けたニョロニョロが光りながらうごめいたりしたのであった。

知らなかったなあ。・・・

コッローディはご存じ『ピノキオ』の作者。でも『青い髪の少女』というのは何だろうか。

文庫は購入し、物語は短かったが面白かった。

コメント一覧

ishibashi 2011年09月19日(月)13時56分 編集・削除

僕もムーミン好きなんですよ。『ムーミン谷の彗星』もいいんですが、一番好きなのは『ムーミンパパの思い出』、次が『ムーミンパパ海へ行く』、そして『ムーミン谷の冬』かな。コミックも全巻あります。この幻の第一作はタイトルしか知らず、僕も未読でしたのでさっそく入手して読みました。『グラント』でムーミンシリーズが始まっていたとは。

同時に渡辺温『アンドロギュヌスの裔』も買ったのですが、これは気球小説の系譜を追っている者としては見過ごせない「風船美人」という短編が入っていて、なかなか味わい深いです。一読誰もが乱歩の「押絵と旅をする人」を思い出すはずですが、乱歩の一年前に同じ『新青年』に載っているんですね。ある有名な乱歩研究者は、乱歩の短編は発表の二年前から構想されているので、影響はあるまいと否定的ですが、親交もあり、同じところに出入りしていたわけですから、ないとは考えにくい気も。さらに、「風船美人」は別名義で発表されていて、このペンネームは数号あとに掲載された翻訳にも使われており、その際に渡辺と横溝正史の共同ペンネームとして作られたのだとか。そのため、「風船美人」は横溝作品だと主張する方もいるようです。この辺り、非常に興味津々たるものがありますが、『新青年』界隈は詳しい人が多いでしょうから、あまり深入りしない方が無難かも。いずれにせよ、気球と望遠鏡と聞いてぴんときた方は読んだ方がいい作品です。乱歩にはない軽みがあってとても洒脱だと思います。