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ベストセラーの世界史

本会会員で、ヴェルヌの翻訳も手がけていただいている三枝大修さんの共訳書『ベストセラーの世界史』が太田出版より刊行されました。生前のヴェルヌに関する限り、「ベストセラー」と呼ぶに値するほど売れた本は『八十日間世界一周』くらいなので(同時代に遥かに売れている本はかなりあります)、本来こうした本に取り上げられる必然性は薄いにもかかわらず(死後および全世界での売れ行き、という話になれば別なのですが)、ヴェルヌに数ページが割かれています。フランスを中心としているので、「売れている」という印象があるヴェルヌを避けて通れなかったのでしょう。それ以外の小ネタ的な話も満載で興味深い読み物になっています。

コメント一覧

ishibashi 2013年08月12日(月)15時44分 編集・削除

中野明『グローブトロッター 世界漫遊家が歩いた明治ニッポン』が数か月前に出ていました。まだ読んでいないので新刊情報としてこちらにメモしておきます。『八十日間』を枕に、その後の「世界漫遊家」の日本経験をたどる、という趣旨の本のようです。個人的な興味としてはフォッグとかトレインのような『八十日』以前の世界一周者に関心があるのですが、そこは一切記述なし。トレインはネリー・ブライの後に二度も世界一周をしているので、取り上げられてもいいとおもうんですが……。その代わり、恥ずかしながら知らなかった人がそこそこ取り上げられているので、ネタにはなりそう。『八十日間』関係の記述には横浜本を参照していただいています(ただ、出所のはっきりしない「伝説」も交じっていますが)。ちなみに著者の中野氏には、『モンテ・クリスト伯』で有名な「腕木通信」に関する著書もあります。

ishibashi 2013年08月20日(火)03時08分 編集・削除

そうそうもう一点、松浦寿輝『波打ち際に生きる』(羽鳥書店)は、著者の東大退官記念の講演と授業を収めた薄い本ですが、「Murdering the Time――時間と近代」と題された後者はかなり充実していて、ヴェルヌとウェルズも登場し、興味深い比較が行われています。