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知られざる稀覯書

あけましておめでとうございます。今年は研究会にとって大事な一年になるはずです。こちらでも逐次ご報告しますので、ご注目いただければ幸いです。その前にまずは、会誌Excelsior !第5号の刊行が控えています。特集は『海底二万里』。すでにほぼ原稿は揃っており、鋭意編集を進めて参ります。

さて、こういうことはすでに旧年中に書くべきだったかと思いますが、2010年をちょっと振り返りつつ、ヴェルヌとも会とも関係ないことなど。昨年は、個人的には、最近ご無沙汰気味だった日本の現代文学をまた読み始めた年で、とはいえ、新しい作家を読んだわけではなく、ともに高齢ながら現役の小沢信男と山田稔を今頃発見したりしておりました。前者については、ここ数年ずっと探していた『わが忘れなば』(晶文社)を(大西巨人『精神の氷点』の改造社版ともども)ようやく入手。『わが忘れなば』は、この本を熱心に探している少数の人々の間で、なかなか古書店に出回らないことで知られています。こちらのブログの記事によれば、「この四十年ほどで三回しか見たことが」ないとのこと、おそらく「日本の古本屋」などに出たとしても、すぐに買われてしまったりして見過ごされたことも一、二度はあったかもしれないとはいえ、それにしても十年に一度くらいしか出ないわけです。僕の場合は去年の夏休み前に「日本の古本屋」に出ていたのをたまたま見つけて飛びつくように買いましたから、当然、このブログの作者の方の目には触れていません。値段は2000円と法外に(と思うのは、この本を探している少数の人だけでしょうが)安く、届くまでびくびくしました。無事に届いた本は美本だったものの、先に紹介したブログの記事(ちなみに続きがありますので、ぜひ「次の日」もクリックしていただきますよう)に出ている書影の通り、この本は黒い函入りなのですが、その函がありませんでした……。いやまあそれだけの話なのですが、この小説集、素晴らしく充実しており、ひとつだけ挙げれば、花田清輝も絶賛したという「盧生都にゆく」は、最近流行の多世界ものや永劫回帰もの小説の究極の形をすでに示してしまっていると思います。

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ishibashi 2011年05月06日(金)15時23分 編集・削除

その後、状態はやや芳しくないものの、函入りを無事入手。ここでご報告するのもなんですが。